就職と喫煙

信州大学人文学部教授の生活と意見
柴野均のブログ日記より

今年の4月に書いたエントリーで、喫煙者を採用しない企業を紹介した。
業種は接客業なのでタバコ臭い人間には向かないのはいうまでもないが、 そこでは定期的にニコチンを補給しなくてはいけない従業員を抱えることに対する経営面からのデメリットが強調されていた。 これがあながち特異な例ではなくなりつつある。
たとえば、ヨーロッパでは「喫煙者お断り」 の求人条件を出した企業に対して、 欧州委員会は「差別にはあたらない」という判断を下したという。
そういう条件を出したのはアイルランドの企業だが、 「企業は完全に差別の非難を受けることなく、喫煙者を拒否できる」 (シュピドラ雇用・社会問題・機会均等委員)と言明したという。

受動喫煙による社員の健康問題だけでなく、 ニコチンが切れると戦力にならない社員をなくすことで企業の力を伸ばそうという 経営的視点が出てくるのは当然であろう。

学生たちの話を聞いていると、 就職説明会や面接試験の会場はタバコが吸えないところがほとんどだそうだ。 喫煙所が用意されているケースがほとんどない。
これはその企業のなかでは職場は禁煙になっていて喫煙者のためには 喫煙ルームが用意されていても、そうした特別な措置にはコストがかかる。
また、上の調査結果からわかるように、 喫煙者は非喫煙者とくらべると労働力としての質が劣る。 したがって、「うちはタバコを吸う奴は採らないよ」とはっきり示していなくても、 新たに採用する場合には非喫煙者を採りたいという企業側の考え方が反映しているのではないか。
喫煙所を作らなければ、ニコチン切れでイライラするような志願者をあらかじめ排除 できるのである。

また、現行の健康保険制度下では、大企業では企業ごとに健康保険組合が作られており、 従業員の年金と健康保険料の半分は企業が負担している。 喫煙者には病気にかかり欠勤するものが多いということは、 それだけ企業の負担が大きくなることを意味する。そう考えると、 喫煙者を採らないことにより将来的な医療費の支払いを予防する効果があることから、 今後、医療費の支払い節減を目的に大企業も喫煙者の排除に走り、 採用選考からの除外のみならず、喫煙を理由としたリストラ、なんてことも、 それほど非現実的ではなくなるかもしれない。 (アメリカではすでにそういう例が出てきている。 自宅で喫煙したことがわかった従業員が解雇されたケースである。 「従業員に喫煙者がいることによって医療保険費が高くなり、 会社経営に負担がかかる」というのがその理由であった。 これは健康保険サービスの受託をしている会社だったから、 企業イメージの問題もあったのだろう。)
Googleで「就職」「喫煙者」「採用」などの用語で検索してみれば、 喫煙者を採用しない企業がボロボロ出てくる。
http://shibano.exblog.jp/3555678/

これは2006年8月のブログです。 今の世の中を見れば更に喫煙者の就職状況は厳しくなっているのは言うまでもないだろう。
では採用しない理由をみてみましょう。
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